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蒼の髪と銀の雨

PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。                                                                                                       ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」

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思考介入。 ゆめ、ふたり。

 ふと、目が覚める。いや、覚める?
「……これ、は」
 私はつい先ほどまで、森を駆けていたはず。いえ、つい今も。いやそもそも、今周囲に広がるのは柔らかな光に照らされた……砂地? 足元にはさらりとした感触があり、それでもしっかりと体重を支えていると感じる。
 その前に、私は。
 そう、私は、せり。
 巫名・芹。みこな・せり。
 大丈夫、私は私でいる。私に拠って立っている、この意識は本物だ。
「”夢の続き”といったところでしょうか?」
 一人呟く。違う。恐らく、まだいる。誰が? そう、あの夢を見せた張本人。悪夢の元凶。

――ストップ。
 このところ、思考が駆け始めると止まらないことがある。その先に、害意や殺意、そして敵の存在があればあるほどに。
「ご明察。ちょっと強引だけど、あなたと話がしたくなって、ね?」
 響いた声は目前。大体5メートルほど先に、その主はいた。
「話ですか。……あなたとする話は、それほど無いと思いますが?」
 響かせる声は私のもの。声は何も無いただ広い砂地に溶け込み、微かの残響も残さない。
「そう? 全く同じ容姿の相手が自分をどう思っているか、思考はどのようなものか、とか……興味ない?」
 響いてくる声は目前。私と同じ姿をした、私ではない存在のもの。

 鏡月。

 鏡月は黒のノースリーブワンピースを着ていて、全く武装していなかった。……私も、同じ格好。ただ、ワンピースは真っ白で、肩掛けポーチのようにナイフと鞘を身に付けていた。
「一応、この空間……状況はわたしの管理下。そして、あなたの目の前にいるわたしが破壊されれば、この空間は無くなる。……別に死ぬわけじゃなくて、お互いに元の状況に戻るだけ。だから、飽きたり嫌になったりしたら、それでわたしを殺せばいい」
 鏡月は薄く微笑み、とても簡単な説明をする。ナイフの柄はちょうど左手に触れそうな位置にあり、やろうとすれば2秒と待たず鏡月の首に新しいオブジェが突き立てられるだろう。
「今すぐにしようとしたら、どうするのです?」
「その時はその時。あなたがわたしを殺し、この世界は閉じる。それだけの事実に、何か説明が?」
 言葉を聞きながら、意識する。――想軌は、起動しない。術式を編む事ができず、魔力を集中することも出来ない。
「……分かったかもしれないけど、ここでは魔術は使えない。取るに足らない土着の魔術も、神に等しいありがたい力も、ここでは等しく意味が無い」
 察知された。魔力の流れさえ発生しなかったのに。……魔力が、無い?
「そのようですね。……それで、どんな話を?」
 フェイクかもしれない。とはいえ、こちらの手には武器がある。軽く握ってみたけど、幻影とは思えない。鏡月がどれほどの使い手か正確には分からないけど、無手の状態から武器を生み出し構えるのに、いくらか隙は生まれるはず。……だから、妙な動きをしても先手を取れるはず。
 どれも希望的観測だけれど、すがるしかない。
「まあ、そんなに大した話じゃないわ。簡単な事」
 そう言いつつ、鏡月はゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。一歩、二歩……
 両肘を抱えるように緩く腕を組み、蒼い髪を揺らして。
「あなたは、気付いているのかということ」

 気付いているのか、と。鏡月は言う。言いながら近づき、3メートルほど前方で立ち止まる。
「……何に、ですか?」
 お互いに自然体で向き合いながら、言葉を交わす。
「あなた自身の変容に。あなた自身の異常に。あなた自身の存在に」
 微笑は崩さず、私を真っ直ぐに見つめてそう言うと、鏡月はゆっくりと目を閉じる。
 私の変容。
 私の異常。
 私の存在。
 気付いているも何もない。私は私。そして人は変わるもの。……今思えば、リビングデッドに対し剣を振るうことに躊躇いを覚えていた事を、懐かしく思う。
 けど、それは変容というより慣れ。適応であり、状況への対応。変容や異常というより、必要なこと。
「変化があるという事は認めています。必要な変化、を」
「変化? 変容じゃなくて? 慣れとか適応という言葉で片付けて、義務という言葉で心を守って、必要だと叫んで逃げ出してない?」
 言葉にかぶせてくる。そしてその言葉は、不思議と胸に突き刺さる。聞いてはいけない。
「例えば、芹。あなたは、敵となれば友人でも家族でも手にかけられる。……否定しても無駄。わたしには分かるから」
 その通りだ。別に、感慨も無いわけじゃない。状況もある。けど、”殺しあう”相手とは、それ程の理由があり対峙する存在。……その時には、友達や家族なんて、きっと言っていられない。そういう予測。
「……そうですね。そのような状況になるまでには理由があり、お互いにそれを譲れないはず。ならば、手にかけることもいとわない」
「理由、ね? それじゃあ、あなたが今まで手にかけた相手はどうして? 死んでない、止めを刺していないなんて言い訳は聞きたくない。その理由は?」
 鏡月は次々に言葉を投げかける。――不快だ。こちらに踏み込もうとする意思を感じる。内面を探ろうとする意図を感じる。閉じたまぶたの奥で、何を考えているのか――
「……銀誓館に関するものは、そうしなければ一般人の方々にも被害が出て……何より、世界結界の崩壊を食い止めるため、です」
 鏡月がやや大きめに一歩を踏み出す。あと2.5メートル。
「何も殺さなくても、とは思わない?」
「結果として命を落とすことまではどうしようもありません。……それに、参加する人々の年齢層はともかく、あれは”戦争”です」
 鏡月がまた少し歩み寄る。2メートル。
「じゃあ、今日みたいな状況で、巫名家側につくのは何故? あなたはともかく、あなたのお友達は沢山人を殺してるわよね?」
「単純です。あなた達は敵であり、離反者であり、それに……無関係の人々にも被害を与えています」
 鏡月がまた歩み寄り、立ち止まった。1メートル。
「そうね。じゃあ、あなたのその判断基準は?」
「巫名家からの情報です。……情報部は、確かな情報を掴んできますしね」
 具体的には知らない。けれど、ナズナさんやお母さん、それに先生もいる。信頼するには、充分な理由がある。
「じゃあ、質問。その巫名家が狂っていたら? 末端はまともでも、中枢が狂っていたら何にもならないわよね?」
「では、その根拠は」
「質問に質問で返さないの。国語のテスト0点なのよ、そういう人って」
 無意味な質問。無意味な例え。――もう、必要ない。

『殺せ』

 たったの1メートル。向こうが距離をつめてくれた。

 殺せ!

 以前にも見た夢では、明らかにこちらの精神を攻撃してきていた。……よって、これ以上話をするのは危険。

――殺す。

 たった一言の決断は、ゆるりと下る。左手にナイフを握り、同時に右手で鞘を払う。ベルトが肩にかかったままだけど、関係ない。一撃で。

――そういえば、なぜ、鏡月は。私と同じ姿を?

 左手を引き、半身に踏み込む。狙うは腹部。突き刺し、そのままぐるりと刃を返して致命傷を与えるだけ。

――そもそも、私は本当に? もしかして、鏡月が。

 右手で鏡月の肩を掴む。逃がさない。殺す。殺す。

――必要がある。今、話さなければ。疑問を。

 どん。











「最初に言ったでしょ? この空間は、この状況は。この世界は、わたしによって管理されている」
 気付くと、ぬくもりがすぐそばにあった。何が。何が、起こったのか。
「わざわざ握って確認していても、刃までは確認しなかった。そして、いざ動く時に”確信している武器”を確認することはしない」
 ふわっと、柔らかな香りがする。森のような、爽やかで優しい香り。
「……とりあえず、あなたが思うほど事は簡単じゃないのよ、芹」
 鏡月の声。いや、私の声? それとも、私は鏡月で、彼女は芹なのか――?
「ひとつずつ、紐解くの。いい?」
 そう言うと、ぬくもりは離れる。……鏡月に、抱きしめられて、いた?
「多分、すぐには分からないと思う。だから、まずわたしの話、ね」
 鏡月はそう言うと、また一歩下がる。1メートルくらいの、距離。

「とりあえず、わたしについて」
 またもとのように微笑みながら、鏡月は話を始める。ナイフは彼女の後方に落ちていて、その刃は何か、プラスチックのようなものに見えた。
「わたしの生まれや作者については、きっと後で分かるから、置いておくとして。……なぜ、あなたを犯し、壊し、殺すとまで宣言したわたしが、こんなことをしているか。そこから説明するね」
 私はというと、呆けている。何が起きたのか。……ただ話は聞けているし、こうなれば抵抗はできない。あれほど強く持った殺意も、今ではどこかへ消えてしまっていた。
「まずわたしの存在そのものについて。……いくらお洒落に興味がないわたしたちでも、鏡くらいは見た事がある。そして、あなたとわたしは全く同じ姿かたちをしている。そこからわかるかもしれないけど、わたしは芹という個体を起点にして、その存在をコピーしたもの。……より正確に言えば、”芹”という個人のコピーを想軌し、稼動させているもの。それがわたし。”鏡月”と呼ばれるモノ」
 驚きは、強くない。全く同じ姿かたちのものは、度々魔術で生まれているから。
 ただ、何と言うか、漠然とした疑問がある。詳しくは、分からないけど……
「当然だけど、まずそれが実現したことが奇跡的。でもその可能性とかの話は関係ないから飛ばすね。……まず、生まれた直後のわたしは極めて不安定で、ほぼ同一な存在であるあなたを疎ましく思っていた。それ自体はまだあるんだけどね。まあ、別の事を今は試そうとしてる」
 それ自体、とは私を疎ましく思う気持ちだろう。問題は、”別の事”だ。
「試そうと思った理由はいくつかある。それは――」

 前提、わたしと芹は基礎が生命体か魔力かが異なるだけで、組成も能力もほぼ完璧と言えるほど同じである。
 以下、理由。
 ひとつ、わたしと芹の行動理念が、あまりに違う。今のわたしは、極めて自由に振舞っている。芹は、自由なようで自由でないように感じる。
 ふたつ、組成が違う。多少の違いは当然として、明らかに異質なものが芹には混じっている。
 みっつ、わたしが触れ合える可能性のある人間は、芹しかいない。

 大きく分けて、三つ。そう締めくくり、鏡月は息をつく。
「それで。試すこと、とは?」
「今やってる。この空間。……そろそろタネ明かしをするね」
 この空間? 引きずりこむことが目的なら、すでに達成している。……けど、もったいぶった言い回しを聞くに、それだけではなさそうだ。
「この空間……というか一種の世界、か。精神世界、抽象的世界、何でもいいけど。 この世界は、あなたとわたしでつくり、維持している。わたしが編んだ想軌に二人の魔力を接続して、お互いの意識を魔法的に交信している。……世界やわたしたちの姿かたちはわたしの管轄で、芹はそれらの固定――アンカーみたいなところに利用させてもらってる」
 荒唐無稽。としか言いようが無い。精神的空間を生み出す魔術は存在するけど、他人の魔力を”勝手に”融通するのは難しい。……魔力という大雑把な分類では同じ力でも、細かな質は違う。「鉄」と呼ばれる金属は大体同じだが、品質や組成により様々なものに分かれる。それと似ている。――どういうものかよくわからない鉄を用いて骨組みを組んでも、いつ崩れるかの見通しなど立つはずも無い。
「不可能です、そんな」
「魔力の性質が把握できないはず、でしょ? でも言ったとおり、わたしとあなたの組成はほぼ完璧に同じ。……そう、魔力さえ。”こころ”が違うくらいで、あとは全く同じ、よ。だからこそ、わたしはいとも簡単に、それこそ準備も予兆もなく、また戦闘の前にすらあなたに接続することができた」
 今日、起こっている戦闘。その直前に、鏡月が来るというイメージは確かに受け取っていた。不自然なほど鮮明に。
「そしてこの空間は、より自分自身の精神に近い存在になる。……当然ね。精神と魔力の混合物で接続したホットラインみたいなものだし」
「では……何のためにこれを?」
 疑問が、口からでていた。急がなければならない。なぜか、そう思った。
「……わたしと、あなたの組成の違い。もっと言えば、あなたに混じる不純物の特定のため、かな。きっとそれは、あなたを知らず知らずに苛んでいる。思考の偏った加速、強引な割り切り、極端な自身への孤立。……あのね、必要があれば友人でも簡単に手にかけるって、普通じゃないと思うよ。戦うとしてもね」
 ちくりと胸が痛む。ふと浮かぶ幾人かの表情に、刃を突き立てる。……ぞっとしない。できれば、そんなことは起こってほしくない。
「そう。あなたは……芹は、そんなことできない。”敵”を倒す事はできてもね。例えばわたしは、明らかにおかしいと思う仲間がいるけど、その人を殺せといわれたらできないよ。たとえ必要な事でもね」
 では、なぜ。――あたまが、痛い。考えるなと、警鐘を鳴らしている。
「け、ど……思考の極端化は想軌の影響で……侵食、が」
「そうだね。……けど、もしも。もしも、それが正確じゃないとしたら? 本当は想軌によって狂気なんて呼び起こされないのに、”そういうものだ”と印象付けられていたら?」
 疑問を抱いたことは、ない。現にそういう事例はいくらでも記録されている。
「残っている記録も――すでに、そういう印象が根深く広がり、何らかの悪意を持って”引き起こされた”ものの記録だとしたら?」
 なぜか。かんがえたくない。
「根拠、は……」
 声は、弱弱しかった。こんな弱い声、出したくはないのに。私は、私は――強く。強く――
「だから、わたしとあなたは同じ。……それに、わたしはあなたと違う形の想軌を、それこそかなり用いている。良い事にも、悪い事にも……けど、わたしは鏡月であるのに対し、芹は明らかに変化している。”想軌の副作用”でね?」
 組成が同じとするなら、鏡月が発生した時期の私がモデルなはずだ。瓜二つなのだから、見た目の年齢は変わらない。
 ならば、想軌による副作用が発生しうるタイミングも、おおよそ合致するか、どちらかが少しだけ先行する形になるはず。なのに、鏡月には発生していない、と。するなら。

 それ自体が妄想ではないか、とも思う。狂気は、自らでは気づきにくいものだから。
「……その可能性も考えた。けど、わたしはわたしなりのやりかたで確認して、本当に”侵食”が発生していない事を確認してる。まあ、その手法自体が狂っているかもしれないし、今は教えられないけど」
 心を読むように、鏡月は続ける。……思えば、この鏡月は何か、雰囲気が違う。
「さっきも言ったけど、生まれた直後のわたしは不安定だった。それは今も残ってる。だから、より直接的に接触できる手段を選んだ。それが、今のわたし。感覚としては、鏡月という存在の中に二つの意識があって、それぞれ管轄が違ったり、重なっていたりする感じかもしれない。”あっち”の鏡月は、こんなに細かな話はできないしね」
 鏡月は微笑みながらそう続ける。――ひとつの存在にふたつのこころ。多重人格……とも、違うようだ。
「うん、違うね。……話を少し戻すね? 想軌の侵食について。少なくともこれは、わたしにいわせれば”存在しない”代物。じゃあ、なぜ発生するのかというと――信仰じゃないかな、と思う。”そういうもの”と強く認識していることで、受け入れやすい環境ができる。そしてそこに、何かしら手を加える。そう、人為的に。……そうして生まれたのが、その”副作用”だと、わたしは思ってる」
 理屈は、分かる。けれど――
「あなたももう、知ってるはず。……さっきわたしを殺そうとした時、あなたは何度判断した?」
 簡単だ。私は一回だけ『殺す』と。強く意識したから。
「そう。でも、よく思い出して。その前に何度か、あなたの声で『殺せ』と聞こえたはず。――それは、なぜ? 行動するのは芹自身なんだから、殺せ、じゃなくて殺す、が正しいはずなのに」

……あ。

 世界が揺らぎ、風はやみ、砂地が、色の無いガラスのようなものに変化していく。
「――時間切れ、か。それとも、”破壊工作”かな?……いずれにしても、しばらくはお別れ、ね」
 空が遠のく。地面の感覚が消える。鏡月との距離が、離れる。
「待っ……!」
「また後でね、芹。……あっちの鏡月に、よろしく」

 その声を最後に。
 私は、現実に引き戻される。



 そして、目が覚める。そう、目が覚める。
 ここは、森。もといた場所だ。
 急がなければ。向かう場所は、分かっている。
 時間はどれほど経ったろうか、数分にも感じる。
 姿勢は元のままで、ぼんやりと佇んでいたように。
「……話も、ありますからね」
 駆け出す。場所は、分かっている。

 この夜の狂宴。その只中に鏡月がいると、魔力の微かな繋がりを手がかりに。

 その、私は。
 そう、私は、せり。
 巫名・芹。みこな・せり。
 大丈夫、私は私でいる。

 私は、私の意思で、駆けて行く。
 何かを、知るために。きっと、知るために。


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