蒼の髪と銀の雨
PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。 ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」
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帰路。届かぬ剣。
薄闇の中でひとり、家路を辿る最中。
「……っ」
左手を握り、つい数時間前に握っていた剣の感触を思い出す。
同時に、言葉に尽くし難い後悔、無力感、苛立ち、怒りが湧き上がって来る。
誰に向けた訳でもない、漠然とした暗い感情。
「…私は、何を」
何を成しただろうか。何を救っただろうか。
何を思っていただろうか。何をこの手に掴んでいただろうか。
結論はすぐに出る。
「……」
何も成してはいない。何も救ってはいない。
ただただ理想口ずさみ、何も掴まずに終わっている。
そうではない。
見事に彼の吸血鬼の悲願を成させ、自らの命を救う事すら手を借りて。
不完全な理詰めで解決しようと思い、掴んだのは無力の証。
「私は…何を」
何をしていたのだろうか。敵を討ち滅ぼす為の力では無かったか。悪意を押し止める為の命ではなかったか。
無論、命捨てたところで状況は全く好転せず、むしろ困惑をばら撒くに終わっていた事は想像するに難くない。
だがそれを考慮しても、覚悟が、思慮が、足りなかったのではないか。
力も、技量も、何もかも。
唯の一つも甘えが許されない状況において、果たして最善を尽くしたと言える行動を取っただろうか。
「…何も」
何も、取ってはいない。結果が全てを物語る。
幾多の命が弄ばれ奪われた館で、今日、確かに”素質ある一般人”の命も奪われ、見返りとして吸血鬼には強大な力が約束されたのだ。
巫名家の、唯の一術者であれば命を以て償うべきところを、自身は”能力者”という免罪符で逃れてもいる。
無力故に命を救えず、能力に依らぬ部分で自身の命は守られた。
撤退すら仲間の援護が無ければ到底不可能で、自分の手で成した事など一つもない。
さりとて、ただ俯いていても何も変化は起こらない。
「……まだ、終わってない…」
まだ、命はある。
「…まだ…」
まだ、力は伸ばせる。
「…」
もっと、強く。巫名の名を背負うに相応しい強さを。
元は命を奪う者として育てられる筈だった運命を。
「…受け入れましょう」
捻じ曲げられた運命の縒りを正し、それに尽力した人々の想いを犠牲にして。
「それでも、強く」
しかし、その力は奪命の為ではなく、あくまで自身の力に。
「もっと……強く」
呟くその表情はひやりとした気迫すら纏い、綺麗と言われる瞳は一種の冷気を宿していた。
―寝泊りしている屋敷が近づき、ふぅっ、とそれらの気配が消失する。
”普段通り”、帰宅の挨拶と簡単な世間話を交わし、自室へ向かう。
「…ふぅ」
一息。過熱しかけていた思考の熱を払い、ギターを手にする。
「落ち着いて、確実に…強く」
思いだけでは何も解決できない。一時の感情に流されても、何ももたらさない。
しかし、それを転機にすることはできる。
命を落とした生徒もいるという。
彼らへの鎮魂でもなく、贖罪でもなく。
あてどもない旋律が、森の木々に染み渡って行く。
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