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蒼の髪と銀の雨

PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。                                                                                                       ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」

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かたすとろふ。あのときあったこと。

「―ッ!」
 思考が逸れた。気配の察知はできていたが、唯一。巧みに視野を潜り抜けた1体のリビングデッド――抗体ゴーストと名付けられたうち、ナンバードと呼ばれ始めた存在――からの襲撃に、右脇腹が悲鳴をあげた。
(深い…)
 反射的に背を丸めそうになるのをどうにか堪え、返す刃で心臓を一突きにしようとするナンバードへ右手を突き出し、その掌に術式を編む。幸運にも、敵は右手前方へと躍り出ていた。
「死ねぇ! 死ね! 死ねシネシねしねしねぇぇええぁあぁあ、アーーーーーッハッハッハアアア!!」
 周囲から迫る気配と、目前の狂気に晒されながらも、術式はぶれない。―危うく殺意の刃が胸に届こうかという直前
「―撃(て)ッ!」
 高速で起動した術陣から蒼い光が放たれると、目前のナンバードを刃もろとも右上半身を破壊し、その身を蒼い電光で束縛する。
 だが、当然気は抜けない。―激しい戦闘の最前線に立っていたものの、まさに強烈なぶつかりあいと混乱の中に呑み込まれてしまい、味方とはぐれてしまったのだ。…そうして、そのような目に遭っているのは芹だけでは無い事が遠方の戦闘音からも感じられる。
 一方で抗体ゴースト達は森から、樹上から、茂みから、前から、後ろから、とにかく物体が存在できるあらゆる空間から襲い掛かってくる。
 さらに言えば、現在の芹は「能力者」としての術式しか展開できない。…実のところ、芹は「能力者」という力そのものを想軌で発動…コンピュータで言えば、エミュレートしているような状態である。全く異質の力であるため、「危なければ切り替える」「想軌と能力者を使い分ける」事ができず、切替そのものに時間がかかってしまう。コンピュータが、プログラムを動かす時に読み込みを行い、処理するのと同じように。

「―ぁ、か…っ」
 不意に呼吸が苦しく、気道が熱くなる。―先の負傷により、肺から血液が溢れそうになっている。多くは無いが、例えばそれで喀血を誘発されることは致命的な隙を生み出す事に直結する。ヒトの反射…即ち防衛機能は、時に危機を招くものなのだ。
「Grrrrrrrrrrrrouuuuulllllllllll!!!!!」
 電光に束縛されたまま意味不明に喚くナンバードを斬り捨て、異物を吐き出そうとする肺と背の痙攣を強引にねじ伏せる。
「―っ、…!」
 呼吸を止め、思考を制限するように敵へ向ける。残りは――見えるだけで3体。多分、増える。
「ヒャ、ヒャ、ヒャハハハハハハハハ」
 高い声音と言葉とは裏腹に、酷く落ち着いた調子で笑う不釣合いな声と共に、背後に殺意を感じる。―大丈夫、想定の距離。
「―!」
 身を屈めて首への一撃を回避。同時に左旋回して勢いのまま脚を斬り払う。どれか一つ失敗すれば、私は彼らの玩具になり、ついでに食糧になる。…おぞましい予測を、しかし冷静な思考の中で呟きながら。
「――ッ!」
 倒されてなお刃を向けるナンバードの頭部へ朱鷺風―長剣だが、付与魔術によって日本刀のように素早い抜打ちができる魔導武器にして詠唱兵器―を突き立て、その活動を停止させる。

 あと、2体。増えないうちに、なんとかしないと。

 少しだけ空いた時間に、すかさず術式を展開しその魔力を吸収。損傷した体内組織へと意識的に魔力を集中させ、激痛と引き換えに体内の出血を抑える。
「――ぅげ、っ…!……かほっ…!」
 だが溜まった血は吐き出さなければならない。いつまでも呼吸を止めてはいられず、感覚も誤魔化せない。堪えきれず右の手に血を吐き出し、口中に血の味と香りが解放される。

 それが、いけなかった。不可抗力とはいえ。言い訳にもならない。

「―――!!」
 不意に、凄まじい衝撃と激痛が華奢な胸を貫いた。がくんと頭が揺れ、自分がこわれる音を聞きながら後方へ吹き飛ばされる。地面に背中を打ちつけ、それによって緩いきりもみ回転をしながら景色が高速で流れる。
(…ぁ)
 既に数え切れないほどの抗体ゴーストを沈黙させ、それなりの戦闘を回避した身体は疲労と負傷、そして本人の意思力による強引な継戦。おまけにこの衝撃を受け、遂に主を見放した。
(―危険。術式をてん)
 思考が完結する前に小さな木をなぎ倒し、茂みに突っ込み、地面で腰を強く打ったのちに仰向けで土を滑りようやく運動が止まる。
「……」
 認識できないほど身体のあちこちを森のあちこちにぶつけ、瞳はどうにか紅の空を映しているだけだった。いや、空が赤いのか視界が血に染まったのか、その判断も思考もできない。
 それでも激痛にさいなまれる身体は少しだけ動き、今しがた芹を吹き飛ばした存在は愉快そうな足取りで動き近づく。
「ジャァァァァァァアアアアアアッスト!!! ミィィイィイィア、アアッハッハ!!! ットットットォォォ!」
 訳・ジャストミート。楽しげな笑いと狂気の笑いを抑え切れないそのナンバードの得物は”槌鉾”だった。…剣だったのだろうが、刃は歪み身は厚く膨れ重さを増し、どれほどかは分からないがどろりとした血を纏っていた。そしてその姿を、芹はぼんやりと視界の隅に捉えた。

―もうすぐ、あれに血じゃないものも付く。弱気めいた予測が心に立ち、それが振り下ろされる瞬間すら鮮明に想像する。…彼の敵からは、すぐに殺そうという気配は感じなかったからだ。

―まずは脚。逃げられず致命的で、しかし即死ではない。
――次はそれに喚く獲物の腕を砕く。多分利き手から。武器を震えず足が動かなければ、もう。
―――そして次は腹。一度癒えた傷を、別の痛みが押し潰すというのは大変な恐怖だから。…世の中、おなかが痛めつけられるのを好むヒトもいるらしいし。
――――また脚。脚は2本あるから。同じ理由でその次は腕。
―――――場合によっては、下腹部も。…男女問わず急所。初撃で頭を砕かなかった事から痛めつける願望があると見える。…ならば、”そこ”を破壊する事を楽しんでも何ら不思議ではない。
……そして頭は最後で、胸は最後から2番目。極限まで痛めつけられる。最後には、柔らかになった私を胃に収める。

「…っ、…けほ」
 ぐったりと手足を投げ出し、仰向けのまま血を吐き出す。口周りが汚れた。奇跡的なことに、両手ともまだ使える。…が、すぐに逃げ出すことは到底叶わない。
「ア、ア、アガハガガガガ!!! ゥゥゥゥゥウウウウアアアアア!!!!」

 距離は20mほど。首を傾げたような姿勢で倒れたことが幸いして、さほど苦労せずに視界に捉え続けている。

「…ねが…く、ば」
 願わくば、予測の通りに。脚を砕き、腕を砕き、腹を潰し、脚を潰し、腕を破壊し、胸を潰して、最後に頭を砕けと。
 距離15。抵抗といわんばかりに、呼吸をどうにか静かにして術式を手元に展開。最後の魔力吸収を試みる。
「ムダァ、ムダ! ムダダム、ム、ムダダムムダムダムダ!!!」
 笑いと共にゆっくりと歩みよる。恐怖を演出するように、”5”の数字を指差しながら。…その意味は、既に聞いていた。殺害し食らった、能力者の数――

 距離10。痛みが和らぎ、少しは楽になった。だが、状況が状況ゆえ程度問題である。…血に汚れているであろう懐の符が、心なしか励まし、痛みを取り去ってくれるように感じる。
「……」

 距離5。すぐそばまで来たナンバードを、芹は力の無い瞳で見つめ。
「ヴァアアアア!!!」
 ナンバードは堪えきれない、という様子で右手の槌鉾…即ちメイス。を芹の右大腿目掛け振り下ろし、どぼん。という鈍く湿った音を響かせながら地面を数cmへこませた。

 それと同時。
「―――ッッ!!」
 酷い激痛が、芹の全身を貫いた。

「……?」
 あるはずの悲鳴と手応えが無い事に、ナンバードが疑問符を浮かべたころ。
 芹は、自身の背を軸に身体を旋回。両脚はやや開いた状態で旋回を加速、半回転ほどしたところでその勢いを利用し、やや上に向け揃える。
「~~ッ!」
 激痛に苛まれながらも相当強引に身体をねじ伏せ、反動と腕の力で跳ね起きてナンバードと距離を取る。――その右掌に、魔導を宿して。

―ウインドミル、だったか。ブレイクダンスでよく行われる、特徴的な旋回運動―と記憶している。かなり無理矢理に再現したため、実物とは似ても似つかないだろうが。
(まさか、一度見たものをこんなに全力でやる日が来るとは…)
 いざというとき、ふと目にしていたものやなんでもない事が役立つこともある―それは、わかっていたけれど。
「…ガ、ィィィィイガアアアア!!!」
 距離は7m程度か。取り逃がした獲物に向けメイスを振りかざすナンバードに、右掌の魔力が輝きを強める。
(―無意識にできるほど余裕がない。なら…!)
 ひゅ、と鋭く息を吸い込み、今まさに武器を振り下ろさんとするナンバードへ向け、想軌を込めて。術式を手に強く意識し、放つ魔弾をその軌跡を。強く、強く想い、叫ぶ。
「キィィィーーーーーール……ロワイアルッ!!」
 それは、大川が持っていた漫画を勝手に読んだ時に見かけた必殺の力。…見た目はまるで魔弾のようで、放つ事は打開を意味していた「お約束」。
 近距離から正確に放たれた魔弾はナンバードの胸に食らいつき、強烈な破壊をその存在に撒き散らしながらもろともにかっ飛んで行く。
「Guuuuuuuaaaaaaaaaahhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!」
 ナンバードはくぐもり濁った悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、20mほど飛翔したあたりで蒼い魔力の光と共に炸裂し、左上半身をごっそり吹飛ばされ倒れたところへ己の得物が降ってきて止めを刺された。
「……勝っ、た…」
 けれど終わりではない。そう思ったが、周囲の気配は先ほどに比べずっと静かになっていた。…そう、残っていたはずのあと一体のナンバードも。いつのまにか肉塊となって遠くに転がっていた。

「……! …終…った…――! ……! ………ぞー!」
 それは、新たな敵の出現という大変局による、破滅を意味する夜の終わりを告げる声だった。

「……」
――最後の最後まで自分として在り続け、刃を振るい、夕暮れに立ち上がる殺意にいくつもさよならを届けた。…”助けるもの”としての友人と離れた前線で、”離別するもの”として在り続けた。それは、誇れる事だろうか。どの存在も受け入れず、痛みを跳ね返して。それは恐らく、どの友人とも違う在り方。…けれど、それでいいのだと。拠点に帰還する道を歩きつつ、思う。


「…これは久しぶりの酷い傷ですね」
 ひどいものだった。傷は数え切れないほどだったし、負傷は内外問わず重篤だった。が、とりあえずこれといった後遺症も残らず、少しだけ残っていた生命賛歌と術的医療により快癒したことは幸運と言えよう。
「…ありがとう、ございます」
 それでも 最 低 限 帰国するまでは安静を強く推奨された芹は、血で汚れ、それでもいくばくかの力を残した符に、呟くように礼を言った。預かった時には数枚だったが、戦闘の合間に使う内に最後の一枚となった治療用の符。
 効果は薄くても戦闘は大分楽になったし、それに――
「…残っていたから、あんな無茶ができたのかもしれませんね」
 そんな風に顧みて。ゆっくりと、休息の眠りに落ちていった。



 ところで。符を渡した本人に無茶を怒られたかもしれないが、その真偽含め別のお話である。





――めずらしいあとがき。

 背後です。ぶっちゃけ、アレ(キールロワイアル)がやりたかっただけです。元ネタ作品ファンの方、そして勿論作者様。ゴメンナサイ。でも大好きなんで一回やりたかったんです!
 最近、初期の話を読み返してみました。そして疑問が浮かびました。

―どうしてこうなった。

 いやー、元々もっとほんわかあったかな感じにしようと思ってたのですが、何時の間にやらバトルやらなんやらが多くなっちゃいましたね。ふっしぎー!
 一番の問題はアレですね。文才とゆーか展開作りとゆーか要するに物書きに必要な能力が足らん!って事ですね。いえ充分だと思うようになったら色々ダメですけども。でもそれなりに読んでいる人がいて、あまつさえ「世界観とゆーかなんか好き」とまで仰って下さる方がいるので、そう極端に見苦しいわけでも無さそうです。ありがたいことです。

 いえ、ありがとうございます本当に。読んでもらえるだけでぼかぁ嬉しいです。もっとコメントばんばんつけてって構いませんよ?ええ。
 返信率低いのは言葉が浮かばないからで、きっちり目は通しております。

 さてさて、今回はこのあたりで失礼します。次はちゃんと「夜編」書きます。書きます本当ですあっやめて物投げないで下さいお願いします。
 ではまた、あとがきは書かないかもですが次のお話で…

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