蒼の髪と銀の雨
PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。 ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」
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さよならの、黄昏
時は黄昏時。一人の少女が、廃墟で孤独に舞い続ける。
生きる為に、勝利の為に、少女は黄昏に舞踏を刻む。
「はっ!」
短い声と共に剣を一閃。
魔力を帯びたその一撃は死して尚動き続けるモノの肩口から横腹までを一直線に切り裂く。
「…゛…ー…」
喉から呻き声を漏らしながら崩れ落ちたソレを見て、剣を握りなおした少女―芹は、心中で言葉を紡ぐ。
――変わったな、と。
以前…銀誓館に来たばかりの頃には、リビングデッドや自縛霊など、人間の姿をもったモノを相手取る事すらままならなかったのに。
躊躇い、迷い、それでも決意と共に剣を振るっていたのに。魔術を編んでいたのに。
「もう、慣れてしまいました、ね」
鈍い音と共に、背後に接近していたリビングデッドの胸を貫く。そのまま身を半旋回し、吹き飛ばす。
あの頃には想像もできなかった、容赦の無い攻撃と意思。
かつて「人間と同じ姿で戦いづらい」相手だったものが、今では「ヒトの形であるだけの敵性存在」となっている。…それはつまり、ただ斬り捨てて焼き払い、撃ち抜くだけの対象という事。
――冷たい、意識。
「…はぁ…っ」
戦闘で僅かに昂った呼吸を整え、意識を研ぎ澄ませる。
「……さん、は。痛みを刻んで…でしたっけ」
ついと浮かぶは、友人の姿。この「モノ」達の無念という痛みを、受ける痛みを、与える痛みを、心に刻むと。そう決意したという、友人の姿。
直接聞いたわけではないが、そう、どこかで聞いた。
痛みを受け入れて、優しさを受け継いで、きっと彼女はそうして生きていく。
――自分[わたし]とは、違う。
「私を優しいと、言う人たちもいますね…」
きっとそんな事は無い。今この瞬間にも、1体のリビングデッドを物言わぬ遺体へと還していく。それは過激ではないが、無慈悲な剣閃。
勝利を目指すその舞踊はどこか美しく、けれど返り血という反撃すら許さぬ、冷たく鋭い独演会。
―優しくなんか、ない。芹はそう、心で呟く。
現に変わってきている。かつてあった、躊躇いという一種の優しさすら失くしている。それのどこが優しいなどと言えようか。
「…それでも、そうですね」
せめて、自分なりに。
「私なりに、手向けの言葉をかけても悪くないかもしれませんね」
最後のリビングデッドを斬り払い、剣に付着した血を払い、納刀。
去り際に、芹はぽつりと呟く。
「さよなら」
それは、別離を告げる、最後の言葉。
時は黄昏時。独奏者は誰ともなく、その言葉を囁いたのだった。
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