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蒼の髪と銀の雨

PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。                                                                                                       ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」

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灰色回想。夕暮れと地平線と旋律と

――色の無い世界。

――灰色ではなく、美しい緑ではなく。

――赤く。

――黒く。

――それは、夕暮れの彩り。


「それじゃあ、今日はこれまでにしようか」
 夕陽の中、全身に紅を浴びた様な世界の中。
 二人いる少女のうち、髪の短い、やや身長の高い少女が言った。
「大分上達してきたね。…びっくりしたよ。この分だと、ボクが負ける日も近いかもね」
 そこは、森の中。森に作られた、ふたりのための広場。
「…そんなことないです。ナズナさんに勝つなんてこと…」
 言葉をうけ、髪の長い少女が静かに答える。彼女もまた、夕陽に染まっていた。
 そんな長髪の少女の頭を軽く撫でて、短髪の少女が思いついたように言葉を口にする。
「ふふ……あ。そうだ。毎日修練を頑張っているから、おいしいものを持ってきてあげるよ」
 ちょっと待ってて、と続け、単髪の少女――ナズナが木々の合間の小道を駆けてゆく。
 その勢いに、長髪の少女は戸惑いながら頷くとその姿を見送り、自分は小さな切り株に腰掛ける。

――夕暮れに染め上げられた世界はどこか不気味で、しかし美しく。
 剣術の修練で高まった熱が、涼やかな風に冷やされてゆく感覚。

 その感覚と世界を楽しんでいると、ナズナが小さな箱を持って戻って来た。
 箱には小洒落た文体で何か書かれていて、その箱もまた夕陽に彩られていた。
「お待たせ。これ、最近知ったお菓子なんだけど」
 言いつつ長髪の少女の横に腰掛けると、箱を開けて中に入っているそれを取り出す。
「…?」
 物珍しげに見つめる長髪の少女にひとつ渡し、もう一つ、自分の分を取り出す。
「シュークリームっていうんだ。ふかふかでおいしいんだよ」
 ナズナはそう言うと、シュークリームを一口頬張る。
 それを見て、長髪の少女は右手で一口分をちぎりとると、口に含んだ。
「…クリームが入っているのですね」
 上のほうを取ったために肝心のクリームが殆ど口に入らなかったものの、生地の中を覗いた少女があらたにちぎりとりつつそう言う。
 ナズナも一口目を飲み込み、クリームをこぼさないようにね、と言ってから。
「そう。この生地とクリームが良くあってておいしいんだよ。…特に、このお店のはおいしいと思う」
――ああ、まるで普通の女の子みたいな話だなと、心の中で呟きながら。
「ん……おいしいです、ね」
 口元に少しクリームを付けたまま、長髪の少女が柔らかに微笑む。どうやら気に入ってくれたようだ。
「良かった。…これからも、たまに買って来てみるね。ここでふたりだけで食べるように、さ」
 ナズナは少女の口元をハンカチで拭いながら、同じく笑顔でそう言う。
 そして、こんな笑顔をもっと見たい、とも思いながら。

 不意に、世界が傾く。
 世界が歪み、何かが少女の胸を食い破り、夕陽に血飛沫が舞い、地面と少女の身体を染め上げる。
「――」
 ナズナが何事か呟くように言うが、もはや聞こえない。
「――!」
 少女が何か叫ぼうとするが、世界にその声は響かない。
 世界の全てが夕陽の逆光を浴びて黒く染まり、ただただ血液と生命だけが流れ出し失われる感覚。
「――!」
 聞こえない。
「―!」
 響かない。

 声は、響かない。
 響くのは、風と木々が奏でる旋律だけ。

 響かせるは、旋律だけ。聞き苦しい叫びなど、必要のない世界。

「――!」
聞こえない。

 そのうち、斜陽の光がまるで刃となり。

「――!」
聞こえない。

 音が消え、地面に身体を縫いつけ。

「――!」
彼女の声は、聞こえない。

 視界も。世界も。その光に侵蝕されてゆく。

 すべてを照らし、全てを暴き

 全てを融かし、染め上げ

 鼓動も、息吹も、全てが――



「――芹!」


「…どうだ?」
 芹の手当てをしているナズナに、錫那が後ろから声をかける。
「うん、多分大丈夫。意識を失う前に、回復術式を発動していたのかもしれない…傷から魔力が侵蝕しかけているから、なんともいえないけど…」
 芹の右腕には包帯が巻かれ、その上には治癒の魔力を込めた布が巻きつけられていた。
 芹はまだ、目を閉じたままだが。

 ナズナと錫那がここに到着した時、既に芹は意識を失っていた。
 複数箇所の裂傷、打撲傷、そして酷く損傷した右腕。いくつかの傷は塞がってはいたものの、魔力が浸透し蝕む術式が仕込まれていたのか、実際の負傷以上に消耗していたのである。
 手当てを開始した時は一刻の猶予もない状況であったが、手持ちの治療道具とナズナの手早い治療により、どうにか一命を取り留めたのである。

「…芹、芹!」
 ナズナが何度目かの声をかけ、覚醒を促す。命拾いしたとはいえ、目覚めなければ回復したとはとても言えない。
「――芹!」
 声を聞きつつ、錫那は周囲を警戒。――実際、既に2名ほどが襲撃してきて、今は拘束され転がっている。
「…芹…!」
 ナズナの声がやや震えているのが分かる。
 肩を軽く叩き、身体を揺すらぬように注意しながら刺激を与え呼びかける。
「……」
 やがて、芹がゆっくりと目を開き、ナズナの顔に焦点が合わされる。
 それを見て、ナズナがふっと息を吐き、安堵したように微笑みを浮かべる。
「芹…! よかった…」
 その様子を見て、錫那も口元を緩め、場の空気が僅か弛緩する。
「ここは……」
 ゆっくりと身体を起こし、芹が呟く。右腕は僅かな痺れが残っているものの、行動に問題は無いようだった。
「ボク達がここについた時、芹が倒れていて…とりあえず手当てはしておいたけど、何かあったら言ってね」
 芹が立ち上がるのを助けつつ、ナズナが簡単に説明する。詳細はこの際関係ないのだ。
「そうですか…ありがとうございます。…すみません、お手を煩わせてしまいました」
 装備を確認し、魔力を逆流して力を高めつつそう言う芹に、ナズナが軽く首を振りながら答える。
「気にしないで。…それより、急ごう。そろそろ、先生が相手の頭とやりあう頃だと思うし」
 言いつつ錫那を振り返ると、錫那は小さく頷き、行こう、と呟く。
「…はい。少しでも力になりたいですしね」
 それと、助けてくれた二人にもお礼を…行動そのものとシュークリームかな。と、芹は心の中で思いつつ。

 森の中を、三つの影が駆け抜けてゆく。
 元凶たる、”天声”を討たんと。

 静かで騒がしい森の騒動は、収束へと駆け始めた。
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