蒼の髪と銀の雨
PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。 ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」
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逢魔時。暗闇に響く声と声。
「今現在、5名の同志が奴らの穢れた術と刃を交えている」
日も落ちた森の中で、およそ20名ほどの聴衆――いずれも戦支度を整えた術師か剣士のようないでたちの――を前に、演説のように声を上げる男が一人。
「それに増援として向かった同志もいる……遂に、奴らを叩き潰す為の戦いが始まったのだ」
その男は黒いローブを身に纏い、肩ほどまでの髪も、瞳も、そのローブと同じように黒い輝きを宿していた。
「巫名の血塗られた系譜……そして、その犠牲になる人々を救済する為にも、我々は負けるわけにはいかない」
その声を聞く者達の瞳は真剣で、男の言葉にあわせ士気が高まるのが見て取れる程であった。
「命を落とす事もあるだろう……だが、私と、そして我らが同志は決してその血を、命を無駄にはしない事を誓う」
そして男自身もまた、自らの熱意を言葉に乗せ、その場の意識を一つに纏め上げる。
「では行こう……何としても”蒼き巫女”を捕らえ、その血を以て巫名に我らの意思を示すのだ!」
その言葉に場の空気は沸き立ち、決意を新たにする者、”蒼き巫女”を血祭りに上げんと得物に魔力を灯す者、その他にも次々に言葉と想軌が灯り、森の中へ散って行く。
その背中を見送りながら、男は一人、ほくそ笑んだ。
――愚か者共が、と。
巫名は何一つ…少なくとも、現代においては何らおかしな事はしてはいない。むしろ、超常的な事象や存在・物品を管理し、或いは滅ぼす事に力を注ぐ行為は、”常識”を守る事に一役買っている。
そして”蒼き巫女”等と呼ばれる者は存在しない。
”力ある者”にして後継者たる存在……巫名・芹を葬るために作り出した、言わば虚構の概念である。
だが、彼らはそんな事にすら気づかない。…より正確には、”間違いない事”だと”信じ込んで”いるのだ。
「くく…いかな力が強くとも、俺の声を聞けば最後……唯の駒に成り果てるのだ」
”声”。
”天帝の声”と名付けられたそれは、その声を聞いた者に抗いようの無い情報・記憶を植えつける事が出来る想軌能力である。
勿論偽であろうと無かろうとそれは術者の思うままに、そしてどのような魔術的防御も通用せず、肉声を聞かせれば手ごまと化する。
唯一の問題があるとすれば、電話の通話や録音された”声”にこの効果は無く、術者が認識していない対象にも効果を及ぼすことは出来ないという事。
そして、日数にして90日に一度は”声”を聞かせねば効力を失ってしまう事だった。
だが、その程度は問題にもならないほど、この能力は強力で絶対的な物である。情報を与えさえすれば、それに都合の悪い記憶は表層の思考に現れなくなり、影響下に長くおけば勝手に記憶を捏造し始める。
あとは、機が熟すのを待ち利用するのみなのだ。
男は軽く俯き、重さを伴った呟きを発する。
「待っていろ…俺をこのような立場に追いやった事、必ずや後悔させる…そして…」
そして木に立てかけられていた剣を手にし、続ける。
「血祭りに上げる…貴様の血統、その全てを眼前で引き裂き、絶望の底に叩き落してくれる…」
先刻の演説とは打って変わって、地獄の底から這い出たかのような声音。
だが、それを聞く者も、見る者もおらず、言葉は森に消えてゆく。
「大川…葉子…貴様も来ているのだろうな……ククッ、俺の声を聞いて這い蹲れ。犬よりも従順に、策士よりも役に立つ、最高の手駒にしてやる」
どす黒い感情と共に言葉を吐き出し、男は駆け出した。
――30の駒と、いくつかの的がいる、小さな戦場へと。
「逢魔時。暗闇に響く声と声。」 終―――
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