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蒼の髪と銀の雨

PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。                                                                                                       ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」

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接触。夕暮れと暗闇との境界線。

 森。
紅い夕暮れの世界からの帰還を、その色で認識する。
夕暮れの赤ではなく夜の青、斜陽の黒ではなく月の白。
「――は」
 短いソレは声ではなく、喉から漏れた呼気。
幻想にあった、”ナズナ”ではなく――
「スズ、起きたか」
 男の声。
そう、今は”ナズナ”ではなく、スズナ……”錫那”が、自分の名だった。
「ああ…起きることが出来たらしい。自分でも意外だ」
 淡々と返す声は、ナズナのそれよりも幾分か抑揚も無く、大人びていた。
それもその筈である。なぜなら――
「どうだった?妹の身体は?」
 黒地に白い紋章が描かれたコートを纏った男が、スズナの顔を覗き込みつつ尋ねた。
「妙な言い方をするな。……そうだな、小回りが利いたよ」
 答えつつスズナは身を起こし、幾度か頭を振り手を握り、”現実”へ帰還したことを確認する。
そこにあるのは、他ならぬ自分の身体…髪は短く切り揃えられ、身長も幾らか高くなっている。
あの”夢”の中では、自分はナズナ……妹の姿だったのだ。
「そりゃよかったじゃないか。その調子で、お前の性格も小回りが――」
「黙れ」
 軽口を叩く男の脛に拳を叩きつけると、スズナは立ち上がり、周囲を確認する。
夢から現実への急激な意識の移行に伴う軽い頭痛と眩暈を感じたものの、奥歯を噛締めて耐え、言葉を重ねる。
「……連中は、まだ来てないのか」
 言いつつ思うは、声の主……即ち、大川・葉子。
巫名・睦月と並び足取りの掴めぬ人物として有名で、そして――自分を導いてくれた人物でもあった。
「…お前少しは心配しろよ……ああ、まだ来てないみたいだ。つっても、もう10分もしないうちに接触があるだろうな。……しかしお前、もうちょっとおしとやかにだな」
 脛を押さえて座り込んだままの男が問いに答えた。半泣きで。
そして余計な一言を言い終わる前に、押さえている手もろともに脛を蹴り飛ばされた。

「……10分」
 早い。
今いる場所は、巫名・芹から2kmほど離れた森の中である。
距離そのものはさほど離れてはいないとは言え、この広大な森の中で自分達――”改革派”延べ30名――を見つけ出す事は容易ではない。
 もっとも、「あの」大川である。
悪魔的とさえ言える感性を持ち、さらには”想軌”の使い手なのだ。
「5分持てばいいが」
 スズナがそう呟いた時。
遠方から怒号といくらかの術式が展開する音が聞こえた。
「……来たみたいだなぁ。1分持ったか?」
 どうにか痛みを堪えて男が立ち上がり、声のした方を見つめつつ言う。
その声を聞き、スズナは男に振り返りもせず。
「貴方と同じだ」
 一言言うと、傍らに備えておいた銀色の短剣と革のジャケットを拾い上げ、手早く身に着ける。
言葉の意図を汲みかねた男もまた準備をしながら、スズナに問いかける。
「……俺と同じ?」
 長剣を右手に捧げ持つ男に振り返り、スズナは一言。

「どの程度持つか、アテにならない」

 それだけ言うと、スズナは戦場へと駆け出した。
なぜか気が逸っていた。
師・大川に会うためか。
妹・ナズナに会うためか。
それとも――本来命を奪う相手である、巫名・芹に何か感じ取ったのか。
わからない、わからないが。
「……行けば、わかる」
 そう呟くと、スズナはより加速する。
その視線の先には、魔力の衝突が断続的に煌いていた。

「……ひでえ言い方だぜ。何なら身体で教えてやろうか…?」
 何気に傷ついた男は、ぶつくさ呟きながら走っていた。
と、並走する者が一人増える。
「お…可愛い?」
 身長は150cm程度だろうか。
髪は長く、その肌はきめ細やかで白く、またその顔つきは凛としていて、儚さと鋭さを両立させたような存在。
月光とそれが落とす影によって細部までは見えないものの、まるでそれが”人形”のように美しいということはよく分かった。
「しかし…ウチにこんな子いたっけ?気づいてれば俺がほっとかないんだが…」
 男はなおも呟きつつ走り続け、”接触地点”へ向かう。
「…まあいいか。これさえうまくいけば、町の人々への無用な被害を減らせるんだし、余計な事考えてもしゃーねえ」
 そう呟き、男は並走する”少女”に顔を向け、口を開く。
「おい、嬢ちゃん。お前まだ若いんだから、無茶すんなよ?…無茶する前に是非その遺伝子を残す事を…」
 その言葉に少女は顔を向けるも、前半分を聞いたあたりで加速し、男を振り切る。
「…なんで俺の周りはこんな女ばっかなんだ?」
 呟き、男もまた速度を高める。
右手の長剣を握りなおし、あと少しのところまで迫った戦場を見据える。
「まあいいか。……余計な事考えてもしゃーねえってさっき言ったばかりだったな。これじゃいけねえ。何しろ…」
 そこで言葉を切り、軽く目を閉じ精神を集中する。
再び目を開くと、その眼光は狩人のそれに変わっていた。

「巫名の暴挙を止める好機なんだからな」



                            ――「接触。夕暮れと暗闇の境界線。」 終
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