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蒼の髪と銀の雨

PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。                                                                                                       ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」

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悔恨。勝利は手の中へ、願いし強さは遥か彼方へ。


 土蜘蛛・天輪衆・リリス混成軍の撃破。
9月28日の午前9時から開始し、同日午後21時40分ほどに終息した、四国での決戦の成果だった。
リリスの指揮官にあたる、『揺籠の君』には逃亡されてしまったが、天輪衆の頭目、および朝比奈・瑞貴の撃破には成功していた。
 成果は十分といったところだろう。
3つの敵組織のうち、ふたつを撃破、残る勢力にもそれなりの打撃を与えることができたのだから。

 だが、それは大局で見た流れである。
無論、大局での勝利とは戦闘の勝利を意味するが、個々人では必ずしもそうではない。
例えば倒れた仲間のため。例えば、力尽き命を落とした者達の弔い。
『全体の戦争』のほかに、『個人の戦争』が存在する。
そして、それを果たすことが出来ず、勝利に酔えない者達も少なからず存在する。

 巫名・芹もその一人だった。
彼女は戦闘終了後、打ち上げにも顔を出さず、郊外の公園で、自らを省みていた。

 後援部隊の補助から戻り、戦列に復帰した際、重傷に倒れた仲間の”想い”を受け、果敢に戦った。
そのおかげか、芹本人は(完全に無事とは言えないが)大きな被害を受けず戦い抜くことができた。
それはその”想い”のお陰であり、芹もいたく感謝している。もし無ければ…命を落とした可能性すらあったのだ。

 しかし、それはあくまで”想い”を託した者と託されたものという意味での戦いである。
芹には芹の……満たされぬモノがあった。

――恐れた。
――臆した。
そして――倒れた。

 無力。
その言葉が浮かぶまでに、そう時間はかからなかった。
確かに、最終戦では圧倒的なまでの戦力差があり、敗北そのものは仕方が無いと言える。力量でカバーできるものではないのだから、力不足を嘆く必要も無い。

 そう、問題はそこではないのだ。

臆したこと。 恐れたこと。
さらには、それすらも”あれでは仕方がない”と逃げようとすること。
それが……その弱さが許せなかったのだ。
 可能性を求めて向かったのではなかったか。 可能性を信じて向かったのではなかったか。
その通りである。可能性を求め、信じて、リリス達の本拠へ乗り込んだのだ。

 だが、実際はどうだったか。
臆したのだ。自らが求めた可能性など、幻想に過ぎないのでは無いかと。
恐怖したのだ。可能性を信じきれず、厳然とした”死の可能性”という現実に。

 思いつつ、芹は左手をそっと握り締める。
そして、思わず笑みを漏らす。
「この手は…」
―何を取ろうとしたのでしょうか。そう言いかけて、やめた。
―何を取ろうとしたか等関係ない。…臆し恐れた事で、何かを得る可能性を自ら放棄したのだから。…そう、思ったのだ。

 もしも、自分に全てをかなぐり捨ててでも可能性を追う力があったなら。
 もしも、自分の命を薄めてでも、決意を貫く強さがあったなら。
 もしも……怯え恐れることをねじ伏せる強さがあったなら。

 結果は変わっただろうか?
答えはNO。あるはずがない。
「もしも」等という幻想に浸る甘い自分に…救いなど、無いのだ。

 可能性を追う力が無いのだから。
 命を薄める勇気など、かけらも持ってはいないのだから。
 人にさえ怯えている自分に、恐れをねじ伏せる強さなど……ありはしないのだから。

 左の手のひら。皮膚が破れた箇所から赤い血液が流れ、指を伝い、その隙間から一滴、二滴、地面へと滴り落ちる。

 だから、「もしも」等無い。
何も無いのだから、変化も無い。つまり、無意味な思索。

「・・・・・・」
息を吐く。
その表情は、未だかつて他人に見られたことの無い……暗く、負の気配に包まれていた。

 部分的敗北。個人的な感情。
それが異様なまでに胸に突き刺さる。
己の弱さ、愚かさ、矮小さ、甘さ、未熟さ…
勝利の気配を感じつつも、振り返らずにはいられない…そんな、未熟さ、弱さ。

 強く、なりたい。
そう思った時、芹の脳裏に何かが浮かび上がる。

『敵を攻撃する際は油断なく情け無用一撃必殺。簡単だよ。キャベツを切るように頭を割れば良い』

 判然としない記憶。
その存在すらあいまいな…しかし、確かに今の自分を支えるモノ。

『想軌がうまくいかない?…簡単に考えれば良いんだよ。「燃え尽きて死ね」って、それを考えつつ…放つのさ』

 決して口にはしないその名前。
それはそういう約束。

『…ボクはさ、本当は……に、………あ……を……たかった………』
かすんだ記憶。

『芹!こっち!睦月さんがフライパンで切り開いてるから!はやく!』
手を引く、少しひやりとした手。
白い手と、白い手。

『……ボクの事は秘密にして。…それが、ボクと芹の約束、ね?』
生まれてはじめての、秘密というモノ。

 遠い記憶…そう、大川音楽教室に行く、そのさらに数年前。
本家に居た頃、芹に”力”の扱い方を教えた人物。
――布都・薺(ふつの・なずな)
そして、ひとつの言葉を思い出したのだった。

『怖くても、怯えても良い。だけど、前へ進むこと…先を求めることをやめないで。…今前に進んでさえいれば、いつかは辿り着けるから、ね?』

 大川のように、多くの事は教わらなかった。
ただ、共通している部分がある、そんな人物。

「大丈夫、あンたは強いよ」『大丈夫、芹は強い子だよ』
脳裏に、二つの声が同時に響く。

 つぱ。
左手を開くと、手のひらに食い込んでいた爪が、激痛と共に血液をあふれ出させていた。

「…思い出は振り返っても、立ち返るものでは無いのですが…」
そう呟き、水のみ場へ向かう。
人気の無い公園と市街地は、その様を見守るかのように静まり返っていた。

 手を流水にさらし、血液と痛みを洗い流す。
そうしながら、芹にはある考えが浮かんでいた。

―難しく考えすぎる、と。
いつだってそうだし、多分これからもそうだけれど、少しだけ変えてみようと、思ったのだ。

―恐れたって良い。
―怯えたって良い。
―但し、先を目指すこと。
たったそれだけ、である。

 歩きさえすれば、いつか目的地にはたどり着ける。
しかし、焦って一時的に全力疾走したとしても、そのあとで振り返り続け歩かなくなれば、結局目的地には着かない。

「…先生にも言われたことですね」
礎。築かなければ、結局何も出来はしないのだ。
同時に、積んでさえ居れば礎は形になってゆく。その意思に応じて性質を変えながら。

 血を洗い流し、左手に意識を集中。魔力を流し込み、傷を癒してゆく。

「……さて。暗い顔はもうやめ、ですね」
一人きりの時にだけと限定しているその表情を、両の手で軽く叩き、深呼吸。
目を開き、仲間たちが休んでいる拠点をまっすぐに見るその表情は、先ほどよりも幾分か晴れやかだった。

「来年から高校生ですから……こんなことで立ち止まっていてはいけませんね」
そう呟くと、拠点へ向かって歩き出す。

 そう、立ち止まることだけは避けなければならない。
逆に、歩き続ける意思さえあれば…いくらでも悩めば良いのだ。

 そう思いながら芹の背中を見送る、ひとつの人影があった。
直後にその影は掻き消え、いずこかへと…消えた。



                        ――悔恨。勝利は手の中へ、願いし強さは遥か彼方へ。 完


あとがき

 複数の話に渡る複線っぽいのやってみたいなー・・・
ということで書いてみました(おいおいおい)。

 普段それなりに朗らかで明るいけれど、一人の時には相応に悩んだりしている…ということと、
新展開っぽい感じの演出…だったらいいな・・・!

 ちなみに、「回想録」シリーズの後日談は忘れたわけではありませんので、ご安心(?)を。
むしろこれに絡めたい気分です。頑張ります。

 と、ひどい動機と勢いで書いたので、そこまで語ることがなかったりします。
よって、このあたりで〆とさせていただきます。

もしよろしければ、今一度お付き合い下さい・・・
それでは、ごきげんよう。
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無題


キッカケなんてそんなモノでさー(’’

えー……こんばんわ、紅葉の背後です。
今回の話は紅葉より私の方が良いかなと思って、現れた次第でふ。

芹さんは、一人で抱えて悩む方ですね……でも、
今回は自分で答えを見つけた……というより、吹っ切れたといった感じでしょうか。

新しい展開にシリーズを絡める……ということで、けっこう楽しみですw
さて、ちょい短いですが今回はそろそろ失礼します。

ではではーw
  • 紅葉(の背後)
  • 2008/10/12(Sun)10:18:24
  • 編集

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