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蒼の髪と銀の雨

PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。                                                                                                       ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」

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回想旋律。幾多の想いと一つの道。紅き夕日に何を見た

2008年 6月某日 快晴

 巫名・芹が大川・葉子に出会ってから、5年が経過したある日。芹は、大川に呼び出されていた。
本来なら講義(大川はそう言えと言っていた)はなく、教室に行く必要はなかった筈なのだが。

 大川は、最後の講義をするために、芹を呼びつけたのだった。

 こんこん。
いつもどおりに芹が扉を叩くと、いつもどおりに大川が扉を開け、にかっと笑って見せる。
「こんにちは」
「あいよ、こんちは。…ほら、早くあがんな。暑かっただろ?」
 言われて、お邪魔します。と断り、芹はいつもどおりに教室へ踏み込む。
いつもあった筈の煙草剣山は無く、いつも微かに漂っていた煙草の香りも無かった。
なんとなく違和感を感じながら芹が教室内を見回していると、大川が小型冷蔵庫からふたつのパック飲料を取り出した。
「ほい、いちご牛乳。…まぁ、座んなさいな」
 芹はいちご牛乳を受け取り、いつもの椅子に座ってストローを突き刺す。
”いつも”とは違う違和感を感じながら飲むいちご牛乳は、やっぱり少し違う感じがした。
「…それで、今日は何の御用ですか?」
 ストローから口を離し、芹が尋ねかける。
大川はというと、コーヒー牛乳を机に置いたままで、なにやら大きなケースらしき物を手繰り寄せる。
「今日は……今日は、講義じゃないンだ」
 ほんの少し、声のトーンが沈んでいた。加えて、表情も心なしか暗い。いつもの覇気が無い。
「というと…?」
「来週、引っ越すことになったんだ。週初めに」
 芹が尋ねかけ、直後に大川はそう言った。
――来週初めに引っ越す、と。

「……え?」
 初耳、である。
そんな話は欠片もしていなかったし、そんなそぶりすら無かった。本当の本当に唐突な知らせ。
「だから……講義は昨日で終わり、さ」
 大川はあくまで笑顔であったが、隠せない感情…寂しさや名残惜しさ滲んでいるような表情だった。
続けて、ケースを寄せてその取っ手を取りつつ、大川は独り言の様に言う。
「そんだからせめて……これを、あンたに渡しておこうと思ってさ」
 言い終えると、ケースごと芹に差し出す。
―大きさはギターケースといったところか。艶消しされた黒い革製の箱で、アタッシュケースのように上部に革製の取っ手が付いている。
縁には、これまた艶消しされた銀色のフレームが取り付けられ、高級感を漂わせている。
 いかにも持ち運びには向かない、豪奢で品のある作りに思えた。
「これは…?」
「……あンたの…そうさね……」
 大川が悩んでいる間に、芹はケースの留め具を外していた。まるで引き寄せられるかのように。
そこにあるものが芹の目に映った直後、大川の口から"それ"が何なのかが明かされる。

「あンたの…芹だけの、"手"みたいなモンかね」

 芹の目に映っていたものは、ギター、だった。
特にアコースティックギターと呼ばれるもので、本体の構造により音を増幅し、響かせる。
―まるで、心にある楽譜を、旋律にして何処までも届けるかのように。

「………」
 芹は言葉を紡げずに居た。
見たことはないのに、不思議と自分にピッタリ合うような感覚と…この五年間、ずっと使い続けてきた練習用のギターに近い。いや、全く同じ位の愛着を感じていた。
「あンたはそいつで、自分の礎を築き、旋律を編むと良いさ。…そうすれば、」
「受け取れません」
 大川が言いかけた時、芹は呟くように、しかしはっきりと拒否の意思表示をする。
「……受け取れない? そりゃまた…どうして?」
 大川は一瞬驚いた後、芹に問い返す。
「………」
 静寂。
クーラーの静かな音と、二人の微かな息遣いだけが教室に満ちていた。
「…だって」
 芹が漸く口を開く。
「だって…これは…」
 開き、目にしたときに、既に違和感を感じ取っていた。
それは、普通の楽器では感じられない感覚。超常とそうでないものの境目。

―それは、詠唱兵器だった。

 武器ではないが、持つものに恩恵を与える物品。能力者の間ではアクセサリと呼ばれるモノ。
このギターは、そういう物だった。
「これは……」
 芹は言葉に詰まる。
"普通"でないことに…気付かれてしまった。
変わっていても、会話が苦手でも、"常人"という枠内にはいられるものだ。――炎を放ったり、残留思念から生ずるモノどもを討伐したりしなければ。
 しかし芹は、そういう意味で"常人"から外れている。術式を操り、魔力で身体を強化し、刃を以って思念を討伐する。
本来知られてはいけない事実であるし、知られたくない事実でもある。
それを…ひょっとしたら、一番知られたくない人物に知られてしまったのかもしれない。
 否、確かにその通りだった。いつからかは分からないが、知られていた。
芹は、顔を上げることが出来なくなっていた。…どんな表情をすれば良いのか、分からなかったのだ。
「………心配しなさんな。あンたは強い子だ」
 そんな芹を見つつ、大川が口を開く。
「怖がらなくて良い。…5年前…それ以上か。あンたを初めて見たときには…"気付いてた"ンだからさ」
 気付いてた。その言葉に、芹は驚いたように大川を見る。
気付く。何に?決まっている。能力者だ。
「…アタシは昔からそういうのが見えちまう体質ってか、分かるンだ。…あー、こいつは"違う"な、ってさ」
 自分を見つめている芹に、大川は静かに切り出した。
「んで、あンたの事も見抜いてた。…あー、やっぱ怖いンだろうなーって、思ったよ」
「……」
 つまり、大川は。
「かと思ったら、随分ギターが上手いじゃないか。…まぁ、きちんと習っていない割には、だったけど」
 芹が、特異な存在だと分かっていて。
「…そんでさ、どうせなら気晴らし以外にもギターを使って、楽しく生きてもらいたいなーって思ってたからさ」
 声を、掛けたのだ。
「声、掛けたンだよ。あの日に、ね」
 そして五年間、講義を通じて。
「で、本当ならここを畳もうと思ってたンだけど…最後に役に立って貰おうと思ってさ。引き払わないでおいたんだ」
 様々な音楽や、大切なことを教えてくれていたのだ。
「そしたらいつのまにか5年も経ってたねぇ……で、今頃面倒な用事が入って、引越しをしないといけなくなったのさ」

 芹は、何も言う事が出来なかった。
あれほど、能力のことを知らせたくないと思っていた人物が、まさか最初から能力の事を分かっていて、まして…あんなに沢山の事を教えてくれたとは。
「まぁ、なんだ。…見ているだけじゃなく、手を差し伸べてやりたかったンさね」
 大川は、最後に照れくさそうにそう言うと、椅子から立ち上がり、芹の頭に優しく手を置いた。
「……どうだい?欲しく、なったかい?」
 つまり、このギターは、教室の生徒としての"芹"…そして、"能力者"としての芹への贈り物。
大川が手を差し伸べ、道を示し続け、最後に見せた道標。
…違う。道標ではなく、往く道を開く為、礎を築く為、そして旋律を編み、紡ぐ為の、いわば"手"であった。
「………あの…最後に、良いですか?」
 断る理由等ないが、最後に確認を取る。
「…何だい?」
 どうしても、気になってしまった事。それは…
「怖く、なかったのですか?…私が、そういう能力を持っているという事が」
 "分かる"とは言っても、実際に戦う能力は無いだろう。あったとしても、"見えざる狂気"に陥る可能性がある。
「…そりゃ、あンたの力は強いと感じていたけど…別に怖くなかったよ。…だって、あンたは……」
 芹が大川を見上げ、大川は微笑みながら芹の頭を撫でる。

「あンたは、アタシの大事な生徒なんだから、それ以外に思うところなんか無いさね」

 ただ、それだけだった。
それだけ言うと、大川は芹の頭から手を離し、自分の椅子に戻る。
「とと…さて…そろそろ本格的に引越しの準備をしないといけないから…」
 大川が続きを言う前に、芹がケースを閉じ、取っ手を掴んで立ち上がり、
「ありがとうございます」
 一言。深々と頭を下げつつ、芹は言った。幾つもの思いを込めて。
大川はやれやれ、といったように軽く冗談めかして。
「いいンだよ、お礼なんて。……もとより、それはあンたにあげる予定だったしね。…さぁ、早く持って帰って、寮や屋敷の人たちに一曲披露してやんな!」
 にかっと、いつもの表情に戻る。
「……はい…!」
 そう答えた芹も笑顔で、しかしどこか…凛、とした強さを感じさせる、そんな表情。
「よっし、いい返事だ。…悪いンだけど、本当にスケジュール押してるから…急かすようで悪いね」
 言いつつ、大川は片づけを始める。
「あ…はい。…それでは、これで」
 芹も芹で、いちご牛乳のパックを手に、恐らくはもうくぐらないであろうドアへ向かう。
勿論、貰ったばかりのギターと、そのケースも片手に。
「そんじゃ…あー…」
 どう言ったものかと、大川は言葉に詰まる。と、外に出た芹が、大川を振り返り、一言。
「先生……ありがとうございました。…また、いつか…」
 "いつか"が、恐らくは無い事を芹も察しているのだろう。
それでも、芹はそう言ったのだ。再び会える可能性を、少しでも信じて。
だから、大川も…答える言葉は決まっていた。
「あぁ……またどこかで会おうかね…そんじゃ、またね」
 そう答えると、芹は笑顔のままに大川へ一礼。そのままくるりと背を向けて歩いてゆく。
大川はというと、芹が角を曲がり、その背中が見えなくなるまで見送り、教室へと戻る。
「…あー…ガラじゃないねぇ、アタシも…さ……は、はは………コレ、あったかいんだねぇ…」
 そう言う大川の瞳には、生涯で初めての…涙が浮かんでいた。

2008年 7月某日

 夕暮れ時。
街中からやや外れた場所の、寂れた公園。

―ひとつ、音を紡ぐ。高く、細い音。
―ひとつ、音を紡ぐ。低く、強い音。
―ひとつ、音を紡ぐ。どちらにもつかぬ、中の音。

 随分長い間、旋律を紡いでいた気がする。気付けば、調弦どころか、本格的な演奏にまでなっていた。
その間に、様々な事を…そう、つい最近までの5年間を思い返していたのだった。
言葉にも旋律にも出来ないような、かけがえの無い時間。
「…先生」
 心細くないと言えば嘘になる。
5年間も。まして、様々な事を教わってきた、いわば恩師なのだから。
前置きもなく突然離れることになり、最後にギターを渡された。そんな、余韻すらはっきりしないような別離。

―一つ、音を紡ぐ。
 それでも、芹は振り返らない。
――一つ、音を紡ぐ。少し高く。
 振り返る必要など無く、まるで懐の文庫本のように、いつでも心にあるのだから。
―――一つ、音を紡ぐ。さらに高く。
 それに、振り返ってばかりでは楽譜が読めない。自分の旋律を紡ぐことが出来ない。
――一つ、音を紡ぐ。今度は低く。
 だから、立ち止まり、傷つき、時に膝を付こうとも。
―一つ、音を紡ぐ。より低く。
 決して、振り返らない。…そんな強さが欲しい。
―音が、止まる。今日はおしまい。

「だから…迷っている場合では、ない筈ですね」
 勿論、今も迷っている。
集いに怯え、かといって孤独を貫けない弱さを、芹は許せないでいる。
それでも、迷った末に行き着く場所もある。
―それに、そんな事で全てを投げるなんて事は。
「…先生に、失礼ですね」
 勿論、自分に関わってくれた全ての人にも、と芹は心で思う。
「…もう、こんな時間でしたか…」
 ここからだと寮の方が近いが……今は、静かな場所でゆっくりと、自分の旋律を確かめたい。そんな気分だった。

「…さて、早く帰らないと」
 ご飯の準備やお手伝いをしないといけませんね。と、心の中で呟きつつ、芹はギターをケースに仕舞いこみ、音叉も一緒に格納する。
「涼しい風…明日は雨でしょうか」
 郊外の森へ向かいつつ、芹はそんなことを呟く。
―風が涼しいと思ったら油断しちゃダメだ。雨が降るかも知れないからね。
そう教えてくれたのも、大川だった。
大切なことも、そうでもない事も、色々教えてくれた大川は、もういない。
「…つまり、私の手で…」
 或いは、友人や仲間と協力して。
「礎を固めて、旋律を…」

―刻んで行く。

 まだまだ、課題は多い。
集団というものには未だ慣れず、時に怯えが出るし、それを必要以上に気にかけている。
ゴーストらを討伐する能力や技術も、まだまだであろう。
それでも、一つずつ解決して行けば良い。…人生は長い。焦る必要は無いのだ。
そうすれば、きっと―

「きっと、良い建造物や、演奏会が出来ますね…」

 そう呟く芹の足取りは、公園に来たときよりも、幾分か軽いように思えた――


                  ――回想旋律。幾多の想いと一つの道。紅き夕日に何を見た 終――

あとがき

 …というわけで、連作ssはひとまずの区切りを迎えることとなりました。
後日談は、「後日」らしく、記事が繋がらない位置に記入しようと思います。

 相変わらず勢いで書ききる悪癖が出ていますorz
とはいっても、先生と芹の分かれ方は決して力尽きた為ではなく(笑)、「さっぱりきっぱり別れて、絶対に涙は見せない」という先生の都合だったりします。
 芹はちっとも泣いたりしない子ですが、先生もまた同様。しかして…様々なことを教えた芹に、最後に「涙=自分の暖かさ」を教えてもらった…というえらい分かりにくい比喩です(笑)
文章力があればもっと感動的に……!orz<精進します

 また、今回も勿論感想をお待ちしております。
良い点悪い点、そして勿論、感じたことをばんばん書き込んでしまってください。


 さて、今後の予定ですが。
バトンが回ってきているので、それをまず消化。
その後は、巫月蒼露の機能的な設定、そしてギターの設定など、オリジナル詠唱兵器の紹介。
そして、今回の連作ssの後日談…になります。
 半リアルタイム的な話になっているので(作中、芹が演奏していた日は7月の27日…つまり、記入した日です。丁度日曜日ですし(笑)、それっぽい時間が経ってから書くと思います。
逆に、予定日をいくら過ぎてもごまかしが効くという凶悪な書き方ですが(笑)、どうかよろしくおねがいします。

 それでは、今回はこのあたりで失礼します。
次回からはAと芹がメインでお話をするので、宜しくお願いしますね(何
それでは、またお会いしましょう。
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無題

連作SSの執筆、大変お疲れ様でした。
とっても楽しく読ませていただきました♪

先生のさっぱりした態度も、別れた後泣いていたのも、とてもグッと来ましたよ?
充分感動的だったと思います。
背後さんの涙腺が特別緩いのもあるかもしれませんが(汗

これは、ほんとについ3ヶ月前のお話なんですね・・・。
芹さんも、まだまだこれから、ですね♪
なんだか私も頑張ろうって思えちゃいます。

なので、芹さんがご迷惑でなければ、ゆっくり一緒に歩いていきましょう♪
それでは~♪
  • レアーナ
  • 2008/09/09(Tue)17:29:25
  • 編集

無題

ひとまずの終了か、お疲れ様だ。
正直、勢いでここまで書ければ十分過ぎると思うけどな。
すっきりとした分かれ方が、あー…「らしくて」いいなと思うぜ?(うまい表現が出なかったらしい)

結構最近までの話だったんだな。
まぁ…『運命の糸』の縁に恵まれれば、また会う事もあるだろう。
その時、誇れるだけの建造物が造れているように、私も手伝わせてもらうぜ?
  • コーネリア
  • 2008/09/15(Mon)02:26:31
  • 編集

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