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蒼の髪と銀の雨

PBW・シルバーレインのキャラクター、「巫名・芹(b40512)」のブログです。 後ろの人の代理人(A)との対話や、SS、RP日記などを書き連ねて行きます。最新記事は右側に。シリーズごとのssはカテゴリに。雑多なものはそれぞれカテゴリにちらばっています。                                                                                                       ―― 一人の努力で、なにものにも耐える礎を築けるだろう。しかし、誰かと共にあれば、その上に揺るがぬモノを建築できるのだ。…しかも楽しい――「音楽の先生」

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夏。一つの別れと幾多の出会い。蒼の瞳は何を見る。

―ひとつ、音を紡ぐ。高く、細い音。
―ひとつ、音を紡ぐ。低く、強い音。
―ひとつ、音を紡ぐ。どちらにもつかぬ、中の音。

 旋律を編んでゆく。心のままに、思うままに。
”音は音でしかないんだ。心など持たないし、ただの空気の振動。音波でしかないんだ”
 言葉を思い出す。音楽での「共有」に関わる言葉を。
”でも、だからこそ嘘はつかない。つくことが出来ない”
 声を思い出す。少しハスキーな、格好いい女性の声。
”…だから自分が分からなかったら、とりあえず弦を弾いてみると良いよ”
 5年間、慣れ親しんだ、声。
”その旋律は……きっと、あンたにヒントを置いていくハズさ”

―演奏をとめる。流れるような思考の旋律を断ち切る。
―弦を離す。織機から手を離すように、紡ぐ為のそれを離す。
―ギターを整備し、片付ける。…今日の旋律はちょっと、ズレていた。

 このところ、妙な感覚がある。
別段体調が悪いとか、機嫌が悪いとか、環境に疲れたとか、そういう事はないのに。
ふと、疎外感――いや、何かを敬遠している事に気がつく。

 何を敬遠しているのか?
 何を悩んでいるのか?
 何を――恐れているのか?

 答えは出ない。
旋律にしても、響く音は唯ノイズを残すだけ。
何かが引っかかっている。けれど、それが何なのか分からない。
だから。

 だから、結局は何も変わらず、いつも通りにする他無い訳で。

 巫名・芹は現在、学生寮と森の屋敷…そのふたつを寝床にしている。
最近は屋敷にいることが多いが、寮ならではの大騒ぎに巻き込まれることも少なくない。
 そう…その大騒ぎや、あるいは全く別の空気…例えば、色恋沙汰だとか、そういった「不思議な」空気。
そういったものに、時折戸惑いを感じることがあった。

 例えば、裏山に蛍を見に行こうという話が出て、その鑑賞の当日、その裏山では大変な事になっていた。
具体的には、寮生の一人が持つナイトメアが現実に干渉してきていて、蛍鑑賞に向かっていた寮生達は、不意打ちにも近い戦闘を余儀なくされていた。
 当日、簡単な用事があった関係で出席が遅れた芹も、異様な気配を察知。戦闘に巻き込まれていた。

 結果はというと、寮生たちの説得や機転が幸いしての解決。そのまま蛍鑑賞へと戻った。
…芹も一応はナイトメアとの戦闘、本体たる寮生を起こそうという動き等、その勝利に僅かながら貢献し、無事に解決したことで、蛍鑑賞と洒落込む…つもりではあった。

 奇妙な感覚だった。
全員で団結して場を収め、和気藹々と…蛍を見て、雑談をして…そういう時間だと、芹も思ったのだ。
だが、不思議と。

 さて、帰りましょうか。

 二番目にはその言葉が浮かんでいた。
周囲はというと、解決したことを喜んだり、なんだか微笑ましい組があったり、件の寮生を守るという決意が見えたり。
 芹も芹で、何も悲観していた訳ではない。
また同じことが起こるならば解決しようと思うし、その空気は和やかで、心地の良いもの…の筈だったのだ。
 しかし不思議と…その空気に近寄りがたい物を感じた。気がつけば、帰り道を歩いていた。
間違えたと、口に出してまで自分を偽った。誰かが来たら、疲れたからと振り切るつもりだった。

 もし、これが…ほんの1週間でも前の出来事だったなら。
「先生」に相談できたかもしれない。あの気だるそうな口調で、道を開くためのヒントを聞けたかもしれない。
だが、もういない。
芹にとって、最も頼れる存在だった「先生」はいない。
つい5日ほど前に引っ越してしまった。5年の付き合いなど気にもかけぬように、あっさりと。
そんな事を考えつつ、ふと思う。

 ――不安だったのかもしれない――と。

 何がといわれれば困るが、恐らくは。
あの空気に入る事を、心のどこかで恐怖したのだ。あるいは忌避か、気まぐれか。
 なぜそうなのか、そうなるのか、芹には分からない。
ただ…何かの「感情」でそれを避けた。それだけしか分からない。

 だから…再びギターを手にする。
芹は元々、これでしか自分を表現できなかった。
―ひとつ、音を紡ぐ。
 8歳で世間に出た直後などは、それすらも覚束なかった。
――ひとつ、音を紡ぐ。少し高く。
 10歳の頃、「先生」に出会い……本格的に教わった。
―――ひとつ、音を紡ぐ。さらに少し高く。
 それから5年間、ギターの演奏と、いくらかの音楽と、沢山の先生の言葉と…数え切れないほどの大切なことを教わってきた。
――――ひとつ、音を紡ぐ。もっと高く。
 そして先日、引っ越してしまった。「心配しなさんな。あンたはきっと頑張れる、強い子だ」
―――ひとつ、音を紡ぐ。今度は少し低く。
 それでも、迷いは残る。
――――ひとつ、音を紡ぐ。また高く。
 だから、自分を知ろうと旋律を編もうとする。
―――――ひとつ、音を紡ぐ。さらに高く。
 迷いなのか、恐怖なのか、あるいは別のものなのか、見極めるために。

――ひとつ、弦が弾けた。

「そういえば…交換、してなかったですね」
 弦に打たれた指を口に含みつつ、小さく呟く。
ケースから弦を取り出し、手早く修復し、調弦。

 調弦の最中、震える音叉と弦を見ながら、あることを思い返していた。
この不可思議な気持ちから逃れるように。解決の糸口を過去に見るように…

――それは、「先生」と過ごした、練習とその他諸々の時間だった。



                   ―――”夏。一つの別れと幾多の出会い。蒼の瞳は何を見る。” 終

 ということで、数本立てです。
文章が稚拙な上に長文で頭が痛くなる方も多そうですが、どうぞ、お付き合い下さい。

 内容としては結構な量になる上、やや脱線しかかる事も多いかと思います。
実際、「蛍の雑木林」はフックとしての扱いであり(同時に、身勝手に扱うこともできませんので)、全体的には「芹の内面」に触れる部分があるかと思います。

 過去何があり、誰と出会い、何が変わったのか。
そういった部分を表現できれば良いな、と思っています。

 長文・稚拙・遅筆ですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

 では、今回はこの辺りで失礼します。

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-Comment-

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無題

十分、美味いですよ。稚拙なんかじゃないですし、長文でもなくて…リズムが良いせいか、詩的なイメージなのです。
漠然とした不安と、孤独感でしょうか。
中々良い色と音、出ていると思いますですよ?(にこ

  • 蒼夜
  • 2008/07/27(Sun)14:15:15
  • 編集

お前は……いや、なんでもない。

巫名……あぁ、いや……その。
お前が何故皆と距離を置いているように感じられたのか……少しだけ理解できた気がする。
勘違いしないでくれよ?
本当に少しだけだ……器用な君だから、上手に立ち回っているように見えるが、俺をずっと君が心配でならない。

俺には、友達とか、恋人とか、そういう血の繋がらない他人との絆って物が、良くわからないけれど……何か力が必要なら言ってくれ。

君はきっと、「心配いらない。ありがとう」と答えると思うが……これだけは覚えていてくれ。

俺は君の味方であり、君を心配している人間であり、君を応援している人間であることを。

だから、結社でも君に干渉する。
迷惑だったら、君から離れろ。俺はそれを止めない。

それじゃあな(微笑)

尊敬する人を失うのは……寂しいよな。(俯く)
  • 明正・捩木
  • 2008/07/27(Sun)19:55:20
  • 編集

無題

あのギターにそんな意味があったんですねぇ…

え~…っと、私はあなたに感謝しています。
なんかいろいろ変わった人間(?)な私ですが何か困った事があれば言ってください。
できる限り力になりますから。その為に離れろといっても構いませんので…(一礼)

背後:とても読みやすいです。続き楽しみにしてます。
  • 御剣
  • 2008/07/28(Mon)12:26:12
  • 編集

返信

 コメントの数に驚き、其の上見ている方が想像以上に多くて驚きました(汗)。
読んでいただき、ありがとうございます。
 新しく追加した場合、URL説明欄にその旨を書いておくようにしますので、目安にどうぞ。
以下返信です。

>>四神さん
 わ…有難うございます。きちんと他の人に見てもらう機会が今までなかった為、出来上がりについて、後ろの方はかなり心配していたようです。

 そう…ですね。理由の分からない不安感、孤独感、そこからくる焦燥や、それを取り繕う動き…
といったものを描写していきたいと、後ろの方からの伝言でした。

 割とよくあるテーマではあるので、なんとか独自性を出せれば良いな…と思っているようです。
…今回は中々上手く行ったようなので、この調子で続けて行けるように頑張ります。


>>明正さん
(話を聞き終わり)
…ありがとうございます。
 別に迷惑だなんて思っていませんので、お気遣い無く(微笑)
それと……心配、ありません。大丈夫です。

 そうですね…尊敬しているだけでなく、大切な事も、ギターも、色々な言葉も教えてくれた人ですから…
少し寂しいですが…それについては次回以降にて描写できたらな、と思います。


>>御剣さん
 はい…なので、ギターはよく持ち歩いています。
…心に浮かんだ譜面を逃さぬように。自分を見つめるために…

…大丈夫です。ご心配なく(微笑)。
離れろなんて言いませんので、これからもよろしくお願いします。

(以下背後代理人A)
ありがとうございます。
背後の奴には一発活を入れておきますんで、気長に待ってやってください。
  • 巫名・芹
  • 2008/07/29(Tue)02:28:12
  • 編集

妹みたいな芹へ

綺麗な文章に感動ー。

生きてるといろんな事があるよね。
別れは寂しい事かもしれないけど、悲しい事じゃないって俺は思ってる。

いつか芹のギターを聴かせて欲しいな。
またね。
  • 蒔田・敬介
  • 2008/07/29(Tue)19:57:34
  • 編集

無題

わ、わ、すごい、「詠う」という表現が似合う、綺麗なお話です…
文章のリズムが凛としていて、読んでいて心地よいですね。

そういえば私、巫名先輩とはあまりお話したこと無かったですね。
でも、先輩のギターはいつも気にしてました。私も謡うのが大好きですし、ピアノも弾きますから。
先輩ほど、深い思入れがあるわけではありませんけど…

独りで抱え込むな、とか、みんなを頼れ、なんてことは言いませんけど…
私も、寮の皆も、先輩の手の届くところにいることだけは、忘れないで下さいね。

感想が遅くなって申し訳ありませんでした。(←風月華でのSSラッシュに追いつけず、ほとんど読めてない人)
  • レアーナ
  • 2008/08/03(Sun)00:46:27
  • 編集

無題

あはは、実はこのSSに感想を書き込みしようとして早4日・・・。
なかなか上手くまとまらないな・・。
俺の言いたい事は皆が言ってくれてる様だし
簡単に変えさせてもらうぜ。

とっても良かったぞ、他のSSとはまた違った雰囲気で・・
普段は知る事の出来ない芹の心の中が見れた気がする。
だからこういうSSっていうのは貴重なんだな。

あ~。最近俺ハーモニカ練習してるんだ♪
また良かったら芹のギターに合わせて演奏させてくれよ!

んじゃ、次も期待してるぜ、頑張ってな
  • 2008/08/03(Sun)02:21:53
  • 編集

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